2010年 01月 06日
家具職人 |
今日は建設現場の仕事始め。
今年の仕事始めは造作家具の搬入からはじまった。一般的な建物でいうなら、この住宅はそろそろ竣工引渡しの時期なのだけれど、僕らのような設計士が入る現場の多くでは、造作家具と呼ばれる「オーダーメイドの作り付け家具」が取り付くことになる。そんな訳で今回の建物も、一般の建物より1~2ヶ月くらい工事の時期は長い。今日はそんな工事の初日。京都の工房でつくられた家具がいよいよ運び込まれたのでありました。
僕は独立した当初、一時期造作家具の取り付け職人の手元として働かせてもらっていたことがある。別に何も仕事の当てがあるわけでもなく、仕事の切れ目で以前のアトリエをやめたので、当時は全く仕事がなかった。実はやめる少し前からオーバーワーク気味で、身体が音を上げていたので、やめて最初の仕事の時、僕は運悪く倒れた。医師は原因不明のときによくいう「自律神経失調症」といったけれど、一時は一桁の足し算もできなくなるし、言葉は適当にしゃべれるけれど、記憶の引き出しからはなにもストックがとりだせない状態が続いていた。ああいう状態になると、人がなにを反射神経でおこなっていて、何は思考して動いているのか、その違いがよくわかる。多くの人は歌を「考えて歌うもの」と思っているだろうけれど、実は歌っていうのは、繰り返しで覚えこみ、「反射神経で歌っているもの」だと僕もあの時はじめて知ったのだった。
そんなときの僕の様子を見かねて、以前のアトリエ時代から付き合っていた造作家具の職人さんが、製作用の図面をかいて、現場でとりつける手伝いとして僕をやとってくれたのであった。「一月のうち半分くらいは、全く頭が働かないから無理ですよ」と断わったのだけれど、「気合が足りないから身体を壊すんだよ」と親方は全く僕が体調不良であることを認めてくれなかった。「どうせ風邪ひいたって休めないんだから、俺は風邪をひかない!」と40度を超える熱でも現場を休まず、平気な顔で仕事をする職人の鏡のような方だった。頭が働かないからとノートをとろうとする僕に、「メモを書くから平気で忘れるんだ。全部頭に入れろ!」ととにかく僕の病気を元気で吹き飛ばそうと激をとばしてつづけてくれたのであった。
結局親方には、「本当に頭が働かないとき」にいろいろご迷惑をかけてしまい、一年ほど養生に専念ということになってしまったのだけれど、今頭が働くようになって、あの頃の親方の言葉をいろいろ思い出す。
あの時は本当にお世話になりました。いつも感謝しています。
今年の仕事始めは造作家具の搬入からはじまった。一般的な建物でいうなら、この住宅はそろそろ竣工引渡しの時期なのだけれど、僕らのような設計士が入る現場の多くでは、造作家具と呼ばれる「オーダーメイドの作り付け家具」が取り付くことになる。そんな訳で今回の建物も、一般の建物より1~2ヶ月くらい工事の時期は長い。今日はそんな工事の初日。京都の工房でつくられた家具がいよいよ運び込まれたのでありました。
僕は独立した当初、一時期造作家具の取り付け職人の手元として働かせてもらっていたことがある。別に何も仕事の当てがあるわけでもなく、仕事の切れ目で以前のアトリエをやめたので、当時は全く仕事がなかった。実はやめる少し前からオーバーワーク気味で、身体が音を上げていたので、やめて最初の仕事の時、僕は運悪く倒れた。医師は原因不明のときによくいう「自律神経失調症」といったけれど、一時は一桁の足し算もできなくなるし、言葉は適当にしゃべれるけれど、記憶の引き出しからはなにもストックがとりだせない状態が続いていた。ああいう状態になると、人がなにを反射神経でおこなっていて、何は思考して動いているのか、その違いがよくわかる。多くの人は歌を「考えて歌うもの」と思っているだろうけれど、実は歌っていうのは、繰り返しで覚えこみ、「反射神経で歌っているもの」だと僕もあの時はじめて知ったのだった。
そんなときの僕の様子を見かねて、以前のアトリエ時代から付き合っていた造作家具の職人さんが、製作用の図面をかいて、現場でとりつける手伝いとして僕をやとってくれたのであった。「一月のうち半分くらいは、全く頭が働かないから無理ですよ」と断わったのだけれど、「気合が足りないから身体を壊すんだよ」と親方は全く僕が体調不良であることを認めてくれなかった。「どうせ風邪ひいたって休めないんだから、俺は風邪をひかない!」と40度を超える熱でも現場を休まず、平気な顔で仕事をする職人の鏡のような方だった。頭が働かないからとノートをとろうとする僕に、「メモを書くから平気で忘れるんだ。全部頭に入れろ!」ととにかく僕の病気を元気で吹き飛ばそうと激をとばしてつづけてくれたのであった。
結局親方には、「本当に頭が働かないとき」にいろいろご迷惑をかけてしまい、一年ほど養生に専念ということになってしまったのだけれど、今頭が働くようになって、あの頃の親方の言葉をいろいろ思い出す。
あの時は本当にお世話になりました。いつも感謝しています。
by kenzo_stsk
| 2010-01-06 12:33
| ■建築