2012年 03月 14日
ちいさなまち(その1) |
はじめて短編小説をかいてみた。
3年前のクリスマス頃のことだ。「路字」に数回で掲載しようかと思って書いたものだったし、仲間に読んでもらったら、「まだ完成していないのかも」という意見が多かったので、いつか書き直すつもりで大事にとっておいた。
まあでも。次に手をつけるときはどんな長さになるかもわからないし、そろそろ発表しておかないとタイミングを逃してしまうだろうとも思ったので、このブログに数回で紹介させていただこうと思います。 では、はじまり・はじまり。
『ちいさなまち』 かねこけんぞう
ちいさな町がありました。
ふたつの丘の間をきれいな小川が流れる町でした。
春になると、丘にはきれいな花がさきました。
それはただ一種類の花でしたが、眺める向きによって七色にみえる不思議な花でした。
花のころ丘は七色に輝き、とてもにぎわってみえるので、人はその花をにぎわい草とよびました。
ある春の日、えらい学者の先生が町をとおり、花が七色に咲き乱れるのをみて、とても感心しました。
「なんて素敵な景色だろう。それにこの花はとてもめずらしい。さっそく紹介することにしよう!」
学者が花と町の話を書くと、そんな景色をひとめみたいと、多くの人が訪れるようになりました。丘を見渡す川のほとりには御茶屋ができて、花を見に来た人たちはのんびりできるようになりました。また花も盛りになると、多くの人がバスで町にやってくるようになり、バスが止まって一泊できる、宿屋も一軒できました。
あるとき、宿屋の主人が井戸を掘りました。お客さまの料理をつくるのに、おいしい水を欲しいと思ったのです。しかし思わぬことに、井戸からは温泉がわきました。みる向きによって七色にみえるお湯でした。ためしに主人がつかってみると、なんとも不思議な香りがして、とても気持ちが良くなりました。さっそく宿屋の主人は立派なお風呂をつくりました。お客さんが花を眺めながらゆったりとつかれをとれる、とても気持ちの良いお風呂でした。お風呂のお湯は一年中でましたし、体にもとてもよいお湯だという評判がたって、町には一年中人が訪れるようになりました。旅人のために駅ができて、駅前にはちいさなおみやげやもできました。七色のお湯で蒸し揚げた美味しいおまんじゅうを売る店が必要だったからです。
(つづく)
3年前のクリスマス頃のことだ。「路字」に数回で掲載しようかと思って書いたものだったし、仲間に読んでもらったら、「まだ完成していないのかも」という意見が多かったので、いつか書き直すつもりで大事にとっておいた。
まあでも。次に手をつけるときはどんな長さになるかもわからないし、そろそろ発表しておかないとタイミングを逃してしまうだろうとも思ったので、このブログに数回で紹介させていただこうと思います。 では、はじまり・はじまり。
『ちいさなまち』 かねこけんぞう
ちいさな町がありました。
ふたつの丘の間をきれいな小川が流れる町でした。
春になると、丘にはきれいな花がさきました。
それはただ一種類の花でしたが、眺める向きによって七色にみえる不思議な花でした。
花のころ丘は七色に輝き、とてもにぎわってみえるので、人はその花をにぎわい草とよびました。
ある春の日、えらい学者の先生が町をとおり、花が七色に咲き乱れるのをみて、とても感心しました。
「なんて素敵な景色だろう。それにこの花はとてもめずらしい。さっそく紹介することにしよう!」
学者が花と町の話を書くと、そんな景色をひとめみたいと、多くの人が訪れるようになりました。丘を見渡す川のほとりには御茶屋ができて、花を見に来た人たちはのんびりできるようになりました。また花も盛りになると、多くの人がバスで町にやってくるようになり、バスが止まって一泊できる、宿屋も一軒できました。
あるとき、宿屋の主人が井戸を掘りました。お客さまの料理をつくるのに、おいしい水を欲しいと思ったのです。しかし思わぬことに、井戸からは温泉がわきました。みる向きによって七色にみえるお湯でした。ためしに主人がつかってみると、なんとも不思議な香りがして、とても気持ちが良くなりました。さっそく宿屋の主人は立派なお風呂をつくりました。お客さんが花を眺めながらゆったりとつかれをとれる、とても気持ちの良いお風呂でした。お風呂のお湯は一年中でましたし、体にもとてもよいお湯だという評判がたって、町には一年中人が訪れるようになりました。旅人のために駅ができて、駅前にはちいさなおみやげやもできました。七色のお湯で蒸し揚げた美味しいおまんじゅうを売る店が必要だったからです。
(つづく)
by kenzo_stsk
| 2012-03-14 10:38
| ・「路字」