2019年 07月 18日
貧困が子どもに及ぼす影響について |
「平成30年度世田谷区 子どもの生活実態調査結果報告会」に行った
昨日世田谷区民会館に、世田谷区のおこなった「子どもの生活実態調査」の結果報告会を聞きに行った。これは2015年から2024年までの10年間における世田谷区の子どもや子育てに関する総合的な施策をすすめるための指針「第2期世田谷区子ども計画」の後期計画の策定を目指して、世田谷区が行なった基礎的な調査のこと。世田谷区に生活する小学校5年生と中学校2年生の子どもたちとその保護者を対象にした郵送によるアンケート調査とその分析についての説明をうけた。講師は首都大学東京、 人文科学部の阿部彩教授。
まず貧困には、生きていくために最低必要な生活レベルの困窮を指す「絶対的貧困」と健全な社会生活をために必要な生活レベルの基準の逸脱を示す「相対的貧困」があり、後者は世帯所得の中央値の50%を基準として、それ未満の世帯に属する人数の割合を相対的貧困率と定義している。大人が二人以上いる家庭の10%強、ひとり親の家庭の50%強が相対的貧困層に含まれるとされるとのことであった。世田谷区では小学5年で6~7%が、中学2年で10%がひとり親とのデータがあり、その内50%程度がそれにあたるということになる。
調査ではお金が足りなくて家族が必要とする食料を買えなかったことがあったと答えた保護者の割合とか、朝食を食べる頻度とか、野菜や果物を普段食べる頻度とかから、貧困による困窮の実態を浮き彫りにしていく。なかでも僕が興味深かったのは、貧困が子どもの学びに与える影響の話であった。
まず、貧困の問題とは別に、子ども自身に「学校の授業がわかりますか?」と質問すると、小5の9%、中2の17%が「あまりわからない」「わからないことが多い」「ほとんどわからない」と答えていて、その割合を困窮層に限ると、小5では2割以上が、中2では3人に1人以上がその中に含まれるようになるということであった。そして授業がわからなくなった時期を確認すると、小5では、2年生の頃と答えた子どもと3年生の頃と答えた子どもがそれぞれ25.6%で半数を超えており、中2では小学校までで40%、中学1年生の頃が35.2%となり、授業がわからなくなる時期は小学校の低学年の頃からはじまっていることがわかる。また、勉強がわからなくなった時に教えてもらう人を聞くと、親→学校の先生→親以外の家族→その他の大人という順になっていて、困窮層では親に聞ける子供の割合が一般の50%強に対して、32.9%と低くなっている。このあたりの数字が困窮層の子どもの方が授業がわからない比率が上がっている原因であるように感じた。
データは貧困層の子どもたちの友達関係や放課後の過ごし方などに続いていき、その生活が孤立してスマートフォンなどに依存したものになっていく姿を浮彫りにしてしていた。
さて、話を聞いてすっかり暗い気持ちになって帰ってきたわけなのだけれど、貧困で生活上いろいろな苦労があることはある程度仕方ないことだとしても、公共教育の環境下でさえ、その影響が出てしまうというのは悲しすぎるのではないかと思った。誰もが楽しく学ぶことができて、達成感を得ることが出来る教育環境の整備が必要であることを改めて強く感じた。

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by kenzo_stsk
| 2019-07-18 18:49
| ■社会