2011年 04月 13日
未発表コラム(その1) |
■ヤミ市(下北澤駅前食品市場)
松永:東京の人、特に地元の人にはわかりにくい感覚らしいのだが、ヤミ市的な空間というのは実は大事なものだ。現在、かろうじて新宿西口の思い出横丁や歌舞伎町の新宿ゴールデン街、吉祥寺のハモニカ横丁、上野のアメ横などがヤミ市的な雰囲気を残している。しかし今、東京中から闇市的な空間が消えつつある、いや、悪所として消されつつある。2009年には荻窪北口に残されていた小汚い焼き鳥屋の一画が消えた。豊島区立郷土資料館で池袋のヤミ市再現模型を見たことがあるけれど、すべてを過去のものとして葬り去ってしまっていいのだろうか。そう、「下北澤驛前食品市場」は貴重な歴史の生き証人、文化遺産なのだ。たとえ今そこでお店を出している人が続ける気がなくても、地元の人があんなの別にあってもなくてもいいと思おうと、貴重な戦後遺産であり、人々が焼け跡から復活した生命力の名残なのだ。だから、どこかにその痕跡は残ってほしいと思う。
金子:もし僕が「駅前食品市場を残してください」と建築士としての依頼を受けたらどうするだろう。多くの住民は駅前に防災上不安な要素を残すことは嫌うだろうから、なるべく安全な方法で、でも「ああ、駅前食品市場は残ったのですね」とみんなに思わせなければいけないとしたら…。しかしあの空間を特徴付けている要素というのは、実はあまり多くないのではないとも思う。路地の狭さを含めた区画割りと暗さ(もちろん通路の天井高さは重要!)、そしてあのちょっとでこぼこした床のコンクリートブロックが実はすごく大切だけれど、でもたぶんそんなものだ。もしあの中の一軒の店が突然なくなって、明日違う店にかわっていたとしても、多くの人はその違いに気づきさえしないだろう。市場を特徴づけている大切なものをいかに残しながら、防災上安全な場所に出来るか。建築士として挑戦してみたい課題ではある。
注:上のコラムはそれぞれが独立した文書として書かれたものであり、会話形式のものではありません。なおコラムの並びは執筆順となっています。また今回掲載した写真は2005年に撮られたものです。

松永:東京の人、特に地元の人にはわかりにくい感覚らしいのだが、ヤミ市的な空間というのは実は大事なものだ。現在、かろうじて新宿西口の思い出横丁や歌舞伎町の新宿ゴールデン街、吉祥寺のハモニカ横丁、上野のアメ横などがヤミ市的な雰囲気を残している。しかし今、東京中から闇市的な空間が消えつつある、いや、悪所として消されつつある。2009年には荻窪北口に残されていた小汚い焼き鳥屋の一画が消えた。豊島区立郷土資料館で池袋のヤミ市再現模型を見たことがあるけれど、すべてを過去のものとして葬り去ってしまっていいのだろうか。そう、「下北澤驛前食品市場」は貴重な歴史の生き証人、文化遺産なのだ。たとえ今そこでお店を出している人が続ける気がなくても、地元の人があんなの別にあってもなくてもいいと思おうと、貴重な戦後遺産であり、人々が焼け跡から復活した生命力の名残なのだ。だから、どこかにその痕跡は残ってほしいと思う。
金子:もし僕が「駅前食品市場を残してください」と建築士としての依頼を受けたらどうするだろう。多くの住民は駅前に防災上不安な要素を残すことは嫌うだろうから、なるべく安全な方法で、でも「ああ、駅前食品市場は残ったのですね」とみんなに思わせなければいけないとしたら…。しかしあの空間を特徴付けている要素というのは、実はあまり多くないのではないとも思う。路地の狭さを含めた区画割りと暗さ(もちろん通路の天井高さは重要!)、そしてあのちょっとでこぼこした床のコンクリートブロックが実はすごく大切だけれど、でもたぶんそんなものだ。もしあの中の一軒の店が突然なくなって、明日違う店にかわっていたとしても、多くの人はその違いに気づきさえしないだろう。市場を特徴づけている大切なものをいかに残しながら、防災上安全な場所に出来るか。建築士として挑戦してみたい課題ではある。
注:上のコラムはそれぞれが独立した文書として書かれたものであり、会話形式のものではありません。なおコラムの並びは執筆順となっています。また今回掲載した写真は2005年に撮られたものです。
by kenzo_stsk
| 2011-04-13 11:29
| ・「路字」

