2012年 03月 22日
ちいさなまち(その9) |
作家は大切な友人が家をでてしまったので、とても深く悲しみました。自分の書いた物語を気に入って、町に来た多くの人たちが身近にいることよりも、たった一人の友達と毎日あいさつができなくなってしまったことをとても切なく思ったからです。作家はある映画祭の日、監督にそんな悩みを打ち明けました。「私は哀しくて、哀しくてしかたありません」。もちろん監督にもそんな作家の気持ちはとてもよくわかりましたが、どんななぐさめの言葉も、彼を元気づけることはできませんでした。
「町は変わっていくものだよ。人生もね。でもそれは僕たちにはどうしようもないことさ。だから僕たちはそんなかけがえのないひとときを、言葉や映画に焼きつけて、残すことしかできないのかもしれないね」と彼は作家にいって、やさしく肩を抱いたのでした。
(つづく)
「町は変わっていくものだよ。人生もね。でもそれは僕たちにはどうしようもないことさ。だから僕たちはそんなかけがえのないひとときを、言葉や映画に焼きつけて、残すことしかできないのかもしれないね」と彼は作家にいって、やさしく肩を抱いたのでした。
(つづく)
by kenzo_stsk
| 2012-03-22 01:10
| ・「路字」

