不動産の名前 |
通称地名都市の境界と考察 ~下北沢~
横浜国立大学都市科学部都市社会共生学科学籍: 茂木今日平
はじめに
東京都世田谷区に位置する「下北沢」は、国内外に有名なサブカルチャーの聖地である。
しかし、そんな下北沢という街は、現時点においては、明確にどこからどこまでが下北沢という区切りが存在せず、下北沢駅を中心としてその一帯が下北沢と呼ばれているに過ぎない。そこで本研究では、そんな行政単位ではない地名を通称地名と定義づけ、下北沢の輪郭を不動産の分布から考察できないかということを意義とする。
結果と考察
結果は以下の通りであった。(成城のデータによる考察)


グーグルマップより引用
この分布をみると仙川と野川に挟まれた場所で成城という名称を含む物件が多く見られ、これは、行政単位として存在する成城の範囲と概ね、一致している。
この結果から通称地名を名称に含む不動産の分布から通称地名の都市の境界の策定は可能であると判断し、下北沢でも同様の調査を行ってみた結果以下の通りであった。

この結果を参照すると成城ほど顕著ではなかったものの、西側方面は、国道 318 号を境界とし、北側方面は、国道 413 号を境界にしているように観察できる。また全体として、小田急電鉄の北側に多く、住所別では、北沢 2 丁目を最多として、20 の町丁にまたがっていることが分かった。これをそれぞれの町丁がもつ集合住宅の不動産の総数で割った値を算出し、塗分けマップを作製した。ただし、1%未満は切り捨てで、データの出典は、世田谷区令和三年度土地利用現況調査である。




上記の図から分かるように下北沢という名称は、下北沢を含む北沢 2 丁目で特に顕著で、その名称の使用割合は 48%にも上った。これは、下北沢駅周辺が周りの地域に比べより強いネーミングのブランドを持っていることが示唆された結果である。
また当初の目的である下北沢の範囲については、下北沢が村として存在していた時期よりもわずかに増大していると考えられ、北沢地域、代沢地域だけでなく、大原1丁目や羽根木 1 丁目、2 丁目、三宿 2 丁目も含まれるのではないかと推察する。
加えて成城地域では、その名称を不動産の分布に大きく偏りは見られなかったものの、下北沢地域では、強い偏りがみられ、境界で明確に区分されている成城地域と比較して、境界の作用はあいまいで駅を中心として名称が同心円状にフェードアウトしていくような曖昧性を兼ねており、駅が下北沢のイメージを構築している可能性を指摘できる。
![]()
2020 年度国勢調査 小地域メッシュ
https://www.e-stat.go.jp/gis/statmap-search?page=1&type=1&toukeiCode=00200521

