2024年 04月 23日
継続と持続 |
三浦ゼミの研究発表、4回目は三浦さんによる「社会活動団体の継続性」というレポートの紹介です。
近年まちづくり活動というものは、日本中の自治体で行われていることなので、特に珍しい話ではないのですが、このレポートにも語られているように、その成果をどう評価するかとか、どうすれば住み心地の良いまちがつくれるのかを「まちづくり活動のやり方」を含めて研究することはとても大切なことかと思います。下北沢の場合は、今再開発が一段落つくタイミングで、マスコミなどから注目されていることもあって、成功例として紹介されることが多いのですが、彼女が指摘しているように、自治体が予算を投入し続けてきた今までは、継続することは可能だったわけですが、開発が一段落したのち、活動が自治体の手を離れても上手く持続していけるのかは今後の課題といえるでしょう。特に全般的には「再開発とは関係ないまちをどう良くしていくか?」の方が、一般解としては大切なわけですから、下北沢の活動も今後が正念場といえるかと思います。そんな中でたぶんキーワードとなってくるのは、生活の中でどこからがまちづくりの活動なのかの線引きを見直し、より生活に近い日常的なことをまちづくり活動として引き寄せていくことではないでしょうか。例えば、小学校のPTA活動や、毎朝のラジオ体操、もしかするとおやじの会のソフトボールやフットサルのようなスポーツでさえ、人と人のコミュニティを活性化することはすべてまちづくりに絡めて考え直してみる必要があるように思っています。
では、以下に三浦さんのレポートを掲載します。
社会活動団体の継続性
都市科学部都市社会共生学科 2年 三浦菜子
問い
シモキタリングは「北沢PR戦略会議」として活動を始めてから今年で8年目になる。そこで、活動が盛んなまま大きな規模の組織でここまで活動を継続させてきた要因は何なのだろうか、という問いを立てて、インタビュー調査を行い、シモキタリングの活動の継続の要素について検討した。
調査結果
まちづくり課の方へのインタビューを通して、シモキタリングの特徴としてまちづくり課とのかかわり方があげられると考えた。以前、インタビューを行った浜松市のまちづくり団体では、行政の支援というのはほとんど金銭面のみに限られていた。そのため、行政の方が団体の活動内容についてよく知らないという状態も起こっていた。しかし、シモキタリングでは、まち課の方が話合いに参加したり、団体の相談に乗ったり、といったように、積極的に活動自体にも支援を行っているという印象を受けた。これは、まちの住民以外も参加するシモキタリングの活動において、まち課の方が橋渡し的な役割を担っているからではないかと考えた。
その、まち課の方へのインタビューの中で印象に残った言葉がある。それが「シモキタリングは下北沢というまちをテーマにしている」というものだ。他の団体とは異なり、下北沢というまち自体をテーマとしてあらゆる側面から問題提起を重ねて活動を進めているということだ。この活動の間口の広さは人を集めるうえで非常に重要な要素であると言える。また、この間口の広さの一方で、シモキタリングには「線路跡地の住民の意見を反映した開発の実現」という明確な目標も存在する。達成するべき明確な目標の存在によって団体としての一貫性を持つことができるだろう。
さらに、組織の形にもシモキタリングの特徴が表れている。それが部会の存在だ。様々な部会があることで自身の最も興味関心のある側面からまちに関わることができ、一人ひとりの活動の満足度も高まる。この部会という組織の形も継続に寄与していると考える。シモキタリングには以上のような活動の継続につながる要素を持つが、その一方で持続性についての課題も存在する。活動目的としていた線路跡地の上部利用の開発があと数年で終わってしまうということだ。つまり公式的には活動目的が達成されることになる。
しかし、開発されたまちはその後も長い間たくさんの人に利用されていくことに。その際にはまちをどうマネジメントしていくかという視点が必要になるだろう。「まちづくり」は終わらないということだ。この点から目標は本当に達成されたのか、そしてその後の活動の方向性と意義について、十分に議論の余地があると考える。
by kenzo_stsk
| 2024-04-23 10:30
| ・三浦ゼミレポート

