2006年 11月 20日
防災の話・4(高層化と延焼の関係) |
そして所長の話は再び延焼の問題へと戻っていった。

「結局出火を完全に抑えられない以上、広域に火災が発生する可能性があるわけですから、それをある場所でとめるような『延焼遮断帯』が必要になってきます。今、延焼遮断帯はもっぱら道路をつくるときの理由として使われていますが、別にそれは自動車道路でなくても良いことは忘れてはいけませんね。水路と緑道なんていう風景は昔から防災にとても役立ってきましたし、防火性の高い蔵のような建物をならべていくような方法だって考えられるわけです。」なるほど。どうも行政から『延焼遮断帯=広幅員自動車道路』というイメージをうえつけられていたわけだけれど、それは疑ってみる必要がありそうだ。
「それでは、道路で延焼遮断帯をつくる場合、どの程度の幅があればひとまず効果的だと所長は思われますか?」ここで僕は現在計画されている道路が充分な機能を果たすのかに疑問をもってこんな質問をした。すると所長は「それはとてもむずかしいなあ。周辺の建物の高さや風向きなど条件はいろいろあるので、それは研究者にとっても充分と思える幅はまちまちです。まあ幅が広い方が有効なのは間違いないので、安全性を重視すると結局100m道路というような議論になってしまうのですよね。」そんな回答を聞いてすっかりがっかりしかけた訳だが、所長の話は続いた。「でも一概に道路の幅だけがすべてではないんですよ。幅1mの路地でも、効果的に延焼を遮断する方法はあります。蔵のように厚い土壁を向かい合わせて、できるだけ窓をとらない路地はとても効果的です。京都などでは、そのような路地の軒下に天水桶や防災グッズを配備して、日頃の防災に備えていました。」
「それから街全体の建物の高さの問題もあります。」ここで所長の話はふたたび道路から離れる。「金子さんはずらっと同じ高さの建物が並んでいるのと、建物がちぐはぐな街並みとでは、どちらが防災的に優れた街だと思いますか?」この一言を聞いて、僕は思わず「あっ!」と声をあげそうになった。日頃から高層ビルによるビル風について、私は『風害』のことしか思っていなかったのだが、風が廻るということは延焼を呼ぶということではないだろうか?
「しかも高層ビルの足元に公開緑地を義務づけたりして、わざわざ風道をつくったりしますよね。あれは延焼を防ぐという意味ではとても危険なのです。」そうであった。下北沢の都市計画でも54号は防災のためといいながら、実はその沿道には高層ビルを誘導しようとしている。あれは防災という観点からだけみれば実にちぐはぐな都市計画が進められようとしているわけなのである。‥つづく

「結局出火を完全に抑えられない以上、広域に火災が発生する可能性があるわけですから、それをある場所でとめるような『延焼遮断帯』が必要になってきます。今、延焼遮断帯はもっぱら道路をつくるときの理由として使われていますが、別にそれは自動車道路でなくても良いことは忘れてはいけませんね。水路と緑道なんていう風景は昔から防災にとても役立ってきましたし、防火性の高い蔵のような建物をならべていくような方法だって考えられるわけです。」なるほど。どうも行政から『延焼遮断帯=広幅員自動車道路』というイメージをうえつけられていたわけだけれど、それは疑ってみる必要がありそうだ。
「それでは、道路で延焼遮断帯をつくる場合、どの程度の幅があればひとまず効果的だと所長は思われますか?」ここで僕は現在計画されている道路が充分な機能を果たすのかに疑問をもってこんな質問をした。すると所長は「それはとてもむずかしいなあ。周辺の建物の高さや風向きなど条件はいろいろあるので、それは研究者にとっても充分と思える幅はまちまちです。まあ幅が広い方が有効なのは間違いないので、安全性を重視すると結局100m道路というような議論になってしまうのですよね。」そんな回答を聞いてすっかりがっかりしかけた訳だが、所長の話は続いた。「でも一概に道路の幅だけがすべてではないんですよ。幅1mの路地でも、効果的に延焼を遮断する方法はあります。蔵のように厚い土壁を向かい合わせて、できるだけ窓をとらない路地はとても効果的です。京都などでは、そのような路地の軒下に天水桶や防災グッズを配備して、日頃の防災に備えていました。」
「それから街全体の建物の高さの問題もあります。」ここで所長の話はふたたび道路から離れる。「金子さんはずらっと同じ高さの建物が並んでいるのと、建物がちぐはぐな街並みとでは、どちらが防災的に優れた街だと思いますか?」この一言を聞いて、僕は思わず「あっ!」と声をあげそうになった。日頃から高層ビルによるビル風について、私は『風害』のことしか思っていなかったのだが、風が廻るということは延焼を呼ぶということではないだろうか?
「しかも高層ビルの足元に公開緑地を義務づけたりして、わざわざ風道をつくったりしますよね。あれは延焼を防ぐという意味ではとても危険なのです。」そうであった。下北沢の都市計画でも54号は防災のためといいながら、実はその沿道には高層ビルを誘導しようとしている。あれは防災という観点からだけみれば実にちぐはぐな都市計画が進められようとしているわけなのである。‥つづく
by kenzo_stsk
| 2006-11-20 15:37
| ・室崎署長との「防災の話」

