2009年 02月 07日
武者ゼミレポート(その8) |
その8、「下北沢における路上駐輪と街の利用形態」という論文について。

この論文は、3日間の路上駐輪状況観察により、下北沢駅周辺の路上駐輪の特徴を解き明かし、今後行政によって計画されている駐輪場の計画が有効か否かを分析したレポートである。このレポートを作成するために、論者は下北沢において平日2日間と休日の1日を使い、合計5回の調査をおこなった。またすでに再開発がおこなわれた事例として、平日の午前中に三軒茶屋の調査も試みている。
調査の方法は、まず、下北沢を私鉄で区切られる4つの地域にわけ、それぞれの駐輪状況をカウントしていくわけだが、その際、論者は自転車(2輪)を「普通自転車、子供用座席つき自転車、マウンテンバイク、バイク」の4種類に分類して集計している。またカウントに際しては、路上駐輪のみならず、公営の駐輪場に駐輪されている自転車なども含めた自転車の総数を対象としており、地域によって、駐輪状況にどのような違いが現れるかを解き明かすことを目標としている。
調査の結果、全体的には平日の午前中の1000台弱から、平日昼の1300台程度へとなだらかに増加する傾向があり、休日昼の1300超が、休日午後には1400超へと一日の中では、午後に向かって徐々に自転車の数は増加の傾向をたどることがわかる。ただし、子供用座席つき自転車に関しては、午後や休日になると減少するという、他の車種にはみられない傾向を示すことが指摘されている。また、あまり通勤には使われないであろうバイクが休日になると増加していることなどから、休日は地元住民以外の来街者による自転車利用が相当数あるのではないかと論者は予測している。
そのあと、レポートは地域ごとの傾向を細かく分析し、それぞれの地域がどのような駐輪状況にあるかを解き明かす。同じようにオーバーフローしているようにみえる路上駐輪でも、車種や増加減少の具合などを細かく見ることで、利用の目的など大方予測できるからだ。最後に三軒茶屋などのデータなどとも比較し、論者は以下のような結論を導き出している。少し長くなるが、そのまま引用してみる。
「一口に下北沢の街には駐輪・違法駐輪を含めて自転車が多いと言っても、それぞれの地区特性によって特徴があることが明らかになった。すなわち住宅地であり休日の他地区の受け皿となっている西側地区,商店街機能の少なさから通勤通学利用での自転車多い東側地区,駅前の無料駐輪場や線路脇など地元住民の買い物・通勤通学利用での自転車の多い北側地区,全体に若者的な駐め方が見られ、休日に自転車が増える南側地区といった特徴が見られた。これらの特徴を形作っているのは、全て街を利用する地元住民であり、来街者である。
また、50m圏の分析では、駅前付近に全体の35~45%の自転車が集まっていることが明らかになり、同時にそれだけ駅前への駐輪需要があることも分かった。さらに平日には北口近くでの駐輪需要が高く、休日には北口での需要は減少し、南口付近での駐輪が増えていること等から、地区別のみならず、平日休日間でも、自転車利用の形態が大きく異なることがうかがえる。
さらに、本論文では再開発実施後の事例として三軒茶屋との比較分析を行なった。三軒茶屋では道路が拡張され自動車も多く流入するようになったが、結果として三軒茶屋駅前には下北沢よりも多くの自転車が見られた。このことから、再開発実施後も自転車利用は減少しないということ、また再開発によって駅前には以前よりも駐輪の密度が高くなったということがいえる。また、例え再開発案によって駐輪場を整備したとしても、駅から遠いものでは使い勝手が優れているとは言い難く、三軒茶屋の例では収用台数も充分とはいい難かった。
以上のことより、新設される駐輪場には以下に挙げるような要件が求められる。まず、下北沢での調査から、駐輪場の立地は駅の近く、それも駐輪の集中の仕方から見ても、50m以内の場所につくるべきである。また、三軒茶屋の調査で明らかになったように、再開発実施後に駅前の駐輪密度がさらに上昇することが考えられる。よって、休日には有料駐輪場での駐輪数が減少していたことから、休日に街を訪れた来街者は有料の駐輪場を避ける傾向にあることが分かる。したがって、新たに設置される駐輪場には、例えば、休日は来街者向けに駐輪場を無料で解放するなど、街に自転車を溢れさせない工夫が必要となる。
以上のことから、下北沢という小さな地域の中でも、それぞれの地区や時間帯によって、特徴的な自転車の利用パターンが存在することが明らかになった。再開発案によるものにせよ、それ以外の事業によるものにせよ、単に駐輪場というファシリティを整備すればよいという考え方ではなく、50m圏の比較に見られたような平日、休日の利用客層の違いや、駅前への駐輪の密集状態、三軒茶屋の例に見られる再開発後のさらなる自転車の増加・密集などを考慮した上での駐輪場整備や街づくりが求められるであろう。」
たった、4日間の調査でも、ここまでのことがわかることを示したくれたことに、本当に敬意を表したいと思いました。また、今回の調査であきらかになった地区の特性は、自転車を良く利用する近隣住民として全く違和感のない結果でありましたし、このような地道なリサーチを基にした都市計画が、まさに今求められているものだろうと実感しています。労作、ありがとうございました。

この論文は、3日間の路上駐輪状況観察により、下北沢駅周辺の路上駐輪の特徴を解き明かし、今後行政によって計画されている駐輪場の計画が有効か否かを分析したレポートである。このレポートを作成するために、論者は下北沢において平日2日間と休日の1日を使い、合計5回の調査をおこなった。またすでに再開発がおこなわれた事例として、平日の午前中に三軒茶屋の調査も試みている。
調査の方法は、まず、下北沢を私鉄で区切られる4つの地域にわけ、それぞれの駐輪状況をカウントしていくわけだが、その際、論者は自転車(2輪)を「普通自転車、子供用座席つき自転車、マウンテンバイク、バイク」の4種類に分類して集計している。またカウントに際しては、路上駐輪のみならず、公営の駐輪場に駐輪されている自転車なども含めた自転車の総数を対象としており、地域によって、駐輪状況にどのような違いが現れるかを解き明かすことを目標としている。
調査の結果、全体的には平日の午前中の1000台弱から、平日昼の1300台程度へとなだらかに増加する傾向があり、休日昼の1300超が、休日午後には1400超へと一日の中では、午後に向かって徐々に自転車の数は増加の傾向をたどることがわかる。ただし、子供用座席つき自転車に関しては、午後や休日になると減少するという、他の車種にはみられない傾向を示すことが指摘されている。また、あまり通勤には使われないであろうバイクが休日になると増加していることなどから、休日は地元住民以外の来街者による自転車利用が相当数あるのではないかと論者は予測している。
そのあと、レポートは地域ごとの傾向を細かく分析し、それぞれの地域がどのような駐輪状況にあるかを解き明かす。同じようにオーバーフローしているようにみえる路上駐輪でも、車種や増加減少の具合などを細かく見ることで、利用の目的など大方予測できるからだ。最後に三軒茶屋などのデータなどとも比較し、論者は以下のような結論を導き出している。少し長くなるが、そのまま引用してみる。
「一口に下北沢の街には駐輪・違法駐輪を含めて自転車が多いと言っても、それぞれの地区特性によって特徴があることが明らかになった。すなわち住宅地であり休日の他地区の受け皿となっている西側地区,商店街機能の少なさから通勤通学利用での自転車多い東側地区,駅前の無料駐輪場や線路脇など地元住民の買い物・通勤通学利用での自転車の多い北側地区,全体に若者的な駐め方が見られ、休日に自転車が増える南側地区といった特徴が見られた。これらの特徴を形作っているのは、全て街を利用する地元住民であり、来街者である。
また、50m圏の分析では、駅前付近に全体の35~45%の自転車が集まっていることが明らかになり、同時にそれだけ駅前への駐輪需要があることも分かった。さらに平日には北口近くでの駐輪需要が高く、休日には北口での需要は減少し、南口付近での駐輪が増えていること等から、地区別のみならず、平日休日間でも、自転車利用の形態が大きく異なることがうかがえる。
さらに、本論文では再開発実施後の事例として三軒茶屋との比較分析を行なった。三軒茶屋では道路が拡張され自動車も多く流入するようになったが、結果として三軒茶屋駅前には下北沢よりも多くの自転車が見られた。このことから、再開発実施後も自転車利用は減少しないということ、また再開発によって駅前には以前よりも駐輪の密度が高くなったということがいえる。また、例え再開発案によって駐輪場を整備したとしても、駅から遠いものでは使い勝手が優れているとは言い難く、三軒茶屋の例では収用台数も充分とはいい難かった。
以上のことより、新設される駐輪場には以下に挙げるような要件が求められる。まず、下北沢での調査から、駐輪場の立地は駅の近く、それも駐輪の集中の仕方から見ても、50m以内の場所につくるべきである。また、三軒茶屋の調査で明らかになったように、再開発実施後に駅前の駐輪密度がさらに上昇することが考えられる。よって、休日には有料駐輪場での駐輪数が減少していたことから、休日に街を訪れた来街者は有料の駐輪場を避ける傾向にあることが分かる。したがって、新たに設置される駐輪場には、例えば、休日は来街者向けに駐輪場を無料で解放するなど、街に自転車を溢れさせない工夫が必要となる。
以上のことから、下北沢という小さな地域の中でも、それぞれの地区や時間帯によって、特徴的な自転車の利用パターンが存在することが明らかになった。再開発案によるものにせよ、それ以外の事業によるものにせよ、単に駐輪場というファシリティを整備すればよいという考え方ではなく、50m圏の比較に見られたような平日、休日の利用客層の違いや、駅前への駐輪の密集状態、三軒茶屋の例に見られる再開発後のさらなる自転車の増加・密集などを考慮した上での駐輪場整備や街づくりが求められるであろう。」
たった、4日間の調査でも、ここまでのことがわかることを示したくれたことに、本当に敬意を表したいと思いました。また、今回の調査であきらかになった地区の特性は、自転車を良く利用する近隣住民として全く違和感のない結果でありましたし、このような地道なリサーチを基にした都市計画が、まさに今求められているものだろうと実感しています。労作、ありがとうございました。
by kenzo_stsk
| 2009-02-07 23:49
| ・武者ゼミレポート

