2009年 03月 28日
今西ゼミレポート |
福島大学行政政策学類の今西研究室からレポートがとどいた。

昨年10月に下北沢にフィールドワークにみえた行政政策学の今西研究室からレポートが届いた。そもそも「行政政策学」なんて学類が大学に存在するということ自体大変めずらしい気もする。将来は行政に就職することを目指している学生さんが多いのは当然という感じの学科名だし、実際内定している学生もいると聞いた。
将来の行政計画に影響をあたえるであろうエリートたちに、市民が何を求めているかを伝えることはとても大切なことだと思ったので、気合いをいれてまちを案内したことをよく憶えている。
今日は今西准教授の巻頭言より心に沁みた文書を一部抜粋することで、このレポートを楽しみに読ませていただく予告にしたいと思う。
【以下本文より抜粋】
この2008年度を振り返ると、実に不安定な社会経済状況に翻弄された1年間であったことが思い返される。―中略―世界的な金融破綻は不動産証券化による投資の枠組みを揺るがし、原油の高騰は建築資材の価格と連動して各種開発プロジェクトの見直しを余儀なくした。―中略―こうして概観してみると、あたかも天変地異のような経済変動によって都市は危機に追い込まれたかのようにも見える。だがどうだろう。未曽有の危機だという割に、東京都心にあってはなお高層建築が天空を目指して建ち上がろうとしているではないか。NHKが2009年2月16日に放映した『沸騰都市 最終回 TOKYO モンスター』を見たか。ある有力なデベロッパーはヘリコプターで東京を旋回しながら、まだ東京の都市開発にはやることが多くあると豪語しているではないか。要するに、この間の都市の危機とは、まるで開発をめぐる主体の選別もしくは淘汰の過程に過ぎないのである。さらにその過程は都市再生政策によって仕組まれたものであることを、この1年間の都市の危機は物語っているように見える。都市構造改革は世界都市東京の危機を煽り立て、その競争力強化を揚げて都市再生を推進してきた。「選択と集中」の方針の下に自助努力を促すその手法は、「民間都市開発投資の促進」という名のマネーゲームを惹起した。ただ、バブル経済の時ほどの膨れ上がるような利潤がある訳でもなく、ひたすら薄利多売の都市開発を連続していった結果が今日の都市景観であり都市経済であることは疑いようもない。―中略―なお考え続けていかなければならない課題がある。それは、そうした都市の危機に対して、住民からの再生の展望を描くという課題である。新自由主義への批判をはじめ、課題をいうことはさほど難しくはない。だが、こうした都市再生をめぐる矛盾がそれぞれの「まち」に住み続けてきた住民にいかなる陰を落としたのか。そして、その「まち」から都市再生のうねりに抗する住民の「まちづくり」論理を構築できるのか。そこにこそ、真の都市再生への道程は見えてくるはずである。―以下省略
なんとも気高く、堂々とした語り口ではないか。本論を楽しみに読むこととしたい。

昨年10月に下北沢にフィールドワークにみえた行政政策学の今西研究室からレポートが届いた。そもそも「行政政策学」なんて学類が大学に存在するということ自体大変めずらしい気もする。将来は行政に就職することを目指している学生さんが多いのは当然という感じの学科名だし、実際内定している学生もいると聞いた。
将来の行政計画に影響をあたえるであろうエリートたちに、市民が何を求めているかを伝えることはとても大切なことだと思ったので、気合いをいれてまちを案内したことをよく憶えている。
今日は今西准教授の巻頭言より心に沁みた文書を一部抜粋することで、このレポートを楽しみに読ませていただく予告にしたいと思う。
【以下本文より抜粋】
この2008年度を振り返ると、実に不安定な社会経済状況に翻弄された1年間であったことが思い返される。―中略―世界的な金融破綻は不動産証券化による投資の枠組みを揺るがし、原油の高騰は建築資材の価格と連動して各種開発プロジェクトの見直しを余儀なくした。―中略―こうして概観してみると、あたかも天変地異のような経済変動によって都市は危機に追い込まれたかのようにも見える。だがどうだろう。未曽有の危機だという割に、東京都心にあってはなお高層建築が天空を目指して建ち上がろうとしているではないか。NHKが2009年2月16日に放映した『沸騰都市 最終回 TOKYO モンスター』を見たか。ある有力なデベロッパーはヘリコプターで東京を旋回しながら、まだ東京の都市開発にはやることが多くあると豪語しているではないか。要するに、この間の都市の危機とは、まるで開発をめぐる主体の選別もしくは淘汰の過程に過ぎないのである。さらにその過程は都市再生政策によって仕組まれたものであることを、この1年間の都市の危機は物語っているように見える。都市構造改革は世界都市東京の危機を煽り立て、その競争力強化を揚げて都市再生を推進してきた。「選択と集中」の方針の下に自助努力を促すその手法は、「民間都市開発投資の促進」という名のマネーゲームを惹起した。ただ、バブル経済の時ほどの膨れ上がるような利潤がある訳でもなく、ひたすら薄利多売の都市開発を連続していった結果が今日の都市景観であり都市経済であることは疑いようもない。―中略―なお考え続けていかなければならない課題がある。それは、そうした都市の危機に対して、住民からの再生の展望を描くという課題である。新自由主義への批判をはじめ、課題をいうことはさほど難しくはない。だが、こうした都市再生をめぐる矛盾がそれぞれの「まち」に住み続けてきた住民にいかなる陰を落としたのか。そして、その「まち」から都市再生のうねりに抗する住民の「まちづくり」論理を構築できるのか。そこにこそ、真の都市再生への道程は見えてくるはずである。―以下省略
なんとも気高く、堂々とした語り口ではないか。本論を楽しみに読むこととしたい。
by kenzo_stsk
| 2009-03-28 00:10
| ■研究

